輸入住宅について
1 輸入住宅は後で苦労する円高差益が幸いして輸入住宅は安くなり、今注目されています。 住宅を輸入する方法として、一つは日本で考えた設計プランをもとに、海外で構造材を含めて住宅設備やドアなど一式をまとめて、コンテナに積み込み輸入します。 もう一つの方法として、構造材などを部品単位で注文して輸入する方法です。そのつど細かく部材を注文するので発注ミスがあります。再度発注すると、品物が入ってくるまで工事が遅れてしまい工期に影響します。 地元の小さな工務店が輸入住宅を手がけるときは、輸入商社を通じて資材を輸入する方法があります。輸入資材はコンテナでまとめて入ってくるため、資材置き場が必要です。
私も経験しましたが、資材置き場がなかったため、直接建築現場に置くしかなかったのです。基礎工事が終わるころにコンテナがタイミングよく入ってくれば一番良いのですが、コンテナが早く入ってきても置き場所に困り、遅くなり過ぎても工期が遅れて困るのです。 輸入住宅を輸入・販売・施工するには、資本力と、国内の施工業者の協力と、資材置き場がないとできません 輸入業者は資材の輸入はできますが、どの部材をどれだけ輸入すればよいかわかりません。住宅メーカーは建物の受注は取れても、どのように輸入するのかわかりません。空倉庫の使い道に困っている貸倉庫業者もあります。その三つの業者が協力しあえばよいのですが、利害関係が生じてうまくいかないのです。
2 現地の住宅の施工レベルは低い私も以前、シアトルに輸入住宅の見学に行きました。見て聞いて驚いたのですが、建築費用が日本と比べてとても安いのです。現地では暖房機器完備で坪当たり三○万円前後なのです。それが日本にくるとグレードを大幅に下げているにもかかわらず、なぜか六○万円以上になってしまうのです。どうしてなのでしょう?これに関しては後で説明します。(大工さんの日当は日本と比べて半分位なのですが)。 アメリカの住宅の仕上がりは日本の住宅と比べると、あまり良くありません。これは、日本の大工さんとアメリカの大工さんの性格の違いが施工に出てくるのです。お国柄だと思いますが、日本の大工さんはたとえレベルが低くても、アメリカの大工さんより施工の面でも一般的には几帳面(きちょうめん)なのです。一昔前は、輸入車の仕上げが国産車と較べるととても悪かったのです。それはお国柄なのですが、家造りの仕上がりにも同じことが言えます。 日本では、「現地の大工さんが組み立てる輸入住宅に住んでみませんか?」と言う宣伝文句で営業している輸入住宅メーカーがあります。現地の大工さんが施工すれば手慣れていて良いのですが、アメリカで建てている住宅と同じ作り方になってしまうのです。アメリカでは普通かも知れませんが、施工内容が悪いので日本人には不満かもしれません。それが原因でトラブルのもとになるといったこともあると思います。 3 輸入住宅の注意点(1)断熱材について輸入住宅の断熱材はグラスウールを使います。 高気密、高断熱住宅なため、断熱材は日本の住宅より厚いものをたくさん使います。それが問題で、グラスウールは高湿度の日本の気候に適合しないのです。
ただし日本のツーバイフォー住宅メーカーは、断熱材に関しては日本の気候に適合するように考えられているようです(気を使っている会社もあるということです)。 (2)キッチンセットについて現地ではとても安いのです。たぶん国産の三分の一以下で売られています。カウンターは大理石仕様でも高くありません。ところが扉の造りがあまり良くないのです。特に国産と比較すると、でき上がりの「差」がはっきりとわかります。 蛇口に関しては造りは国産品と変わりがありませんが、日本には規格があるため、一部を除いて輸入品の蛇口は使えません。輸入の自由化を推進しているのに、たいへん矛盾を感じております。オーブンレンジもそのまま使えないものがあります。 (3)ジェットバスについて以前アメリカのジェットバスを使おうとしましたが、ジェットのモーター部が浴槽と一体かされているため漏電の危険があり、日本のタイプの浴室には使えません。仕方がないので国産品のジェットバスを新たに買い求めました。使えなくなったアメリカのジェットバスはスクラップになりました。 蛇口、シャワーセットも国産品です。安いアメリカ製は使えませんでした。 (4)洗面台について洗面台もキッチンセットと同じような仕上がりです。ドアの立て付けなど良くないのです。施工ミスや組み立てミスがあっても、そのまま納品してしまうのです。 私の知ってる人で輸入住宅を建てたのですが、洗面台も輸入品でした。とても造りが悪く使える代物ではなかったのです。三ヵ月もしない間に国産品と取り替えてしまいました。
(5)給湯機、暖房機について電気系の設備機器は、必ず国産品を使いましょう。 外国製が安いからといって安易に購入するのはやめましょう。もし壊れたらどうします? 日本では修理もできません。部品を取り替える方法はどのようにしますか? 輸入住宅が一時的な流行で、各社が撤退し始めたらアフターサービスはどうしますか? 壊れたときのためにも、電気で動く設備機器は国産品を使うべきです。海外から部品を調達していたら、いつ直るかわかりません。 このように設備機器を国産品に切り替えていくと、安いはずの輸入住宅がコスト高になってしまい輸入住宅のメリットが薄れてきます。
(6)輸入住宅のサッシについて輸入住宅のサッシは国産品と少し異なります。掃きだしサッシはひきちがいではなく、片引きサッシなのです。使い勝手が悪いのです。そしてサッシの部品が壊れたらどうします? 国産のサッシよりとても重いアメリカ産のサッシの戸車の痛みはとても早いでのです。戸車の取り替えはどうします? サッシのアフターケアは簡単ではありません。国産品のサッシを使ったほうが良いと思います。 (7)照明器具、コンセントについて電気工事は、電気屋さんの仕事になります。これにも規格があり外国製品は使えず、ほとんど国産品を使います。照明器具も現地では安いのですが、日本で使うにはアフターサービスのことを考えても問題があります。 分電盤、ブレーカーは規格があるため国産製品しか使えません。電気関係は、ほとんど国産製品を使うようになります。
(8)屋根、外壁について屋根材は、耐久性や防火性のことを考えると外国製品はほとんど使えません。国産の瓦、カラーベストなどを使います。 外壁材も耐久性、防火性のことを考えると国産品しか使えません。 屋根材、外壁材は国産製品と比べてもとても安いのですが、法律でしばられている日本で使えないのはとても残念です。 (9)タイルについてタイルは輸入品が使えます。しかし日本ではPL法があります。PL法対策のタイルは滑りにくく作られています。万が一のときには安心です。 輸入品のタイルは国産品と比べると、精度が悪くサイズ、厚さの寸法がそろっていません。これもお国柄のせいでしょう。 (10)建築金物について建築金物も輸入品がそのまま使えるわけではありません。日本では決められた規格なければなりません。特に三階建て住宅の場合は、特殊な金物を使わなければなりません。ここでも輸入品は使えず、コストアップになります。 しかし、平成九年より、アメリカの建築金物メーカーが日本に代理店をつくり、日本の市場に参入するようです。 (11)床板について輸入住宅の床は無垢の床板か、じゅうたんを選ぶことができます。 体の健康のことを考えて迷わずに無垢の床板にするべきです。 北欧の輸入住宅は、高気密、高断熱住宅化されています。ですから施工を間違えると結露しやすく、カビによって健康を害します。したがって、湿度調整をしてくれる無垢の床板を使うべきなのです。 (12)木製建具について輸入住宅の扉や建具は無垢の扉を使っています。この扉に関してはとても立派なのです。日本の住宅メーカーなら高級グレードなのです。 無垢であるため狂いがありますが、お勧め品です。レバーハンドルなどは耐久性があれば輸入品でも良いでしょう。
以上私が携わった輸入住宅について、気がついたことを書き留めてみました。 輸入住宅といっても、そのまますべてのものが使えるわけではないのです。日本ではさまざまな規格があり、国産品を使わざるを得ないのです。その規格が輸入品を使えなくさせ、コストアップになっているのです。 もう一つ大きな問題があります。日本の多湿気候に輸入住宅が適合しないのです。大至急適合するように対策を講じるべきです。輸入住宅が一過性のブームで終わらないことを祈っております。 Copyright (C) 2003 Masuno. All Rights Reserved |