見積りの仕事内容とチェックの仕方



▼左官工事について

 最近は左官工事が極端にに減っております。工期短縮のために外壁のモルタルが防火サイディングに変わってきております。和室の壁もクロスになっております。左官工事が減っているのがおわかりでしょうか。私は予算があれば、内装壁に漆喰(しっくい)仕上げをしております。ちなみに私の家の内装壁はすべて漆喰です。

▼塗装工事について

 塗装工事とはペンキ工事のことですが、住宅の耐久性やメンテナンスのことを考えると外周りには、ペンキを塗る木部や鉄部を使わないようにするべきです。特に海に近い地域では気を付けましょう。

 そして外部の窓枠の木部にニス仕上げ、ウレタン仕上げなどといった仕上げ方は避けましょう。木部の表面にペンキの塗膜を付けてしまうと、雨などで染み込んだ水気の逃げるところがなく、腐り始めるのです。

 よく木製バルコニー等に仕上がりが綺麗だからといって、ニス仕上げやウレタン仕上げにしてしまうことがありますが間違った方法です。室内のペンキ仕上げは、外部ほど重要ではありませんが、床にウレタン仕上げなどをすると傷だらけになるのでやめましょう。

▼内装工事について

 一番ローコストな方法は、クロス仕上げです。クロスもグレードがあり、金額によって選ぶクロスが違ってきます。そのほか塗壁仕上げ、新建材仕上げ、無垢板仕上げなどがあります。予算によって異なります。クロス仕上げの下地は普通一二.五ミリの石膏ボードを使いますが、手抜き工事として九.五ミリのうすい石膏ボードを使うこともあります。壁にぶつかるとすぐ穴があいてしまいます。

▼給排水設備工事について

 蛇口の数、排水の数などを決めます。蛇口も、給水と給湯タイプがあります。蛇口、シャワーセットなども種類がたくさんあるので、カタログを見ながら決めます。蛇口の性能を考えるなら高価なものも、安価なものも変わりはありません。デザインによって金額が異なるだけです。

▼水道局納金について

 水道局納金とは水道局に収める費用のことを言います。前面道路に埋設されている水道本管を掘りだすために、舗装などを剥がします。仮復旧は水道工事店が行いますが、本復旧は水道局が指定した業者に工事をさせるのです。それらの工事代金は、水道本管より引き込みをしたお客さんが支払うのです。それらの費用を局納金と言います。この局納金が高いのです。場合によっては二〜三百万円の局納金がかかる場合もあります。ですから、土地を購入するときには、前面道路より敷地内に口径二○ミリ以上の水道管が入っているかどうかを確認することは、資金繰りの面においてもとても大切なのです。

 水道局の職員は、一般市民に対してはとても親切(批判をもらいたくないので親切にしている)ですが、水道業者に対してはとても高飛車な態度になるようです。私もそれを目のあたりにしております。水道の新築時の通水検査のときには、意地の悪い検査官が業者にいやがらせをするのです。たいした問題でもないのに、いじめられた業者は検査官とトラブルをよく起こしています。そのような暇があるなら、市民のために、いかに局納金を安くするか努力をして欲しいものです。

▼水道加入金について

 加入金とは水道局に水道メーターをもらうために支払う費用です。神奈川県水道の場合は県内に3年以上住んでいると75,000円かかります。

他県から来る人は2倍の150,000円かかります。

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▼手すりについて

 手すりは付いていても、絶対に邪魔にはなりません。玄関の上がり口の手すり、階段の手すり、トイレの手すりなどは年寄りのみでなく、安全を考えても必要なものです。

 手すりは、今すぐ取り付けなくても下地は必ず入れておきます。下地がないと手すりを取り付けるときに大変です。

▼ガス工事について

 ガスの種類は都市ガスとプロパンガスの二種類があります。都市ガスは工事代金は有料です。ガス口の数によって金額が異なります。見積書はガス会社より郵送されてきます。プロパンガスの工事代金は基本的に無料です。

▼畳について

 畳については、われわれプロでも正直いって理解できません。仕上がった畳を見せてもらって,「これが一万円のもの」、「これが三万円のもの」と言われてもすぐにはわかりません。

畳屋に「床(とこ)がちがう」、「ござがちがう」と言われてもわからないのです。ですから、よっぽど予算が余っている場合は別ですが、私は一枚一万円の物を使っております。半畳で三〜四万円もする琉球畳を使う場合もあります。


薬づけの家では長生きしない

▼白アリ消毒について

 白アリ消毒は殺虫剤すので、人体になんらかの影響があります。あまり強力な消毒薬品を使うと、アレルギー体質の人に敏感に反応し、目が見えなくなった人がいます。実は私のお客様の話なのです。

 六〜七年前のことです。家を新築したときに強力な白アリ消毒の薬品を使用したため、入居後に目が見えなくなってしまったのです。大学病院等でさまざまな検診を試みましたが、結局はアレルギー体質と言うことで治療の方法がみつからなかったのです。

 白アリ消毒会社に聞いたところ、そのようなケースがたまにあるようです。その人の立場に立つと、怒りをどこに持っていけば良いのかわかりません。とても気の毒なことをしたと思っております。今でも、なにも知らない小さな子供が、消毒している材木を手にして入るところを目のあたりにするとヒヤヒヤします。私は、現在は白アリ消毒をしていないわけではありません。お客様の希望があれば消毒します。

 しかし、使用する薬品はあまり強力でない物を使います。使用する材木に注意します。白アリに強い、腐りにくい材木を使います。

使用材木については、○○○ページの土台、柱の項を参照してください。

▼鉄骨工事について

 鉄は錆びます。錆止めを塗り、ペンキ仕上げをしても数年で錆びます。

 潮風の吹いてくる海辺の地域では鉄はすぐ錆びます。鉄部に塩分が付着しても、雨水等で塩分が流し落とせる部分は錆びませんが、そうでない部分は確実に錆びは進行します。

ですから設計図面の中で、特に外部に鉄部がある場合は気をつけなければなりません。そのままで鉄部にペンキ仕上げをしてしまうのは、良い方法ではありません。

 外部に鉄部を使用する場合は、まず「ドブズケ」して使うのです。

ドブズケとは、加工した鉄に溶融亜鉛メッキ加工するのです。そのように加工すると錆びの発生がなくなります。ドブズケの表面にそのままペンキは塗れませんが、専用の下地塗料を塗ればペンキ仕上げができます。ドブズケ加工費用はそれほど高くありません。ぜひともお勧めします。 

 すると外部にも加工性の良い鉄が安心して使えるのです。

▼屋根裏換気について

 屋根裏換気はとても大切なものです。今までの屋根裏換気の方法は、自然の風の流れを利用して屋根の中にたまっている熱気を排出するためのものでした。ところが最近の住宅メーカーは、空気の流れを利用したさまざまな工法を開発しています。熱気を帯びた屋根裏の空気を換気扇で強制的に排出したり、床下に送り込んだりして、省エネを考えた工法を売り出しています。


これからは防音と遮音は大切です

▼防音と遮音について

 これからの住まいは、防音と遮音についてもっと考えるべきです。

 特に二階の歩き回る音、トイレの水の音、シャワーの音(特にユニットバスがうるさい)外部の騒音を遮音する対策を考えなければなりません。遮音シート、遮音マットを適材適所に使うことによって効果があります。防音サッシも使えばより効果的です。二階トイレ等の排水音を遮音する商品も販売されています。


▼大工さんのお茶出しについて

「大工さんのお茶はどうすればよいか?」と悩みます。

 はっきり言ってお茶は用意するべきです。住宅メーカーは、お客さんに金銭的と精神的に負担をかけまいとして大工さんのお茶出しを控えるような姿勢です。しかし大工さんの立場に立って見てください。一生懸命家を建ててくれるのです。お茶があるとないとでは大工さんの仕事に取り組む姿勢が違ってくるのです。「まさか?」と思うでしょうが本当のことです。

 お茶代は、現場監督でなく直接大工さんに手渡ししましょう。一ヵ月あたり一〜二万円位がよいと思います。住宅メーカーは「お茶出しの心配はいりません」と言います。しかし私は大工さんの味方をするわけでもありませんが、反対の意見です。

 お茶代にたとえ一○万円支払ったとしてもそれは安いものです。大工さんはその何倍も仕事面で腕を発揮してお返ししてくれます。ですからお茶代の効果は絶大なものがあります。

▼地鎮祭について 

 地鎮祭とは基礎工事が始まる前にする祭事で、土地を鎮め工事中に事故がないように祈願することです。最近は若い人でも地鎮祭をする人が多く見受けられます。

 地鎮祭は主に地元の神社に依頼します。費用は神社に尋ねましょう。神社によって地鎮祭の用品を用意してくれる場合もあります。面倒でなく世話いらずです。利用しましょう。

 地鎮祭は縁起物です。「大安吉日」の午前中が良いに決まっています。早めに予約をしておきましょう。 

▼上棟式について

 上棟式をするのが面倒だからといって住宅メーカーに頼む人がいますが、大工さんの立場に立って見ると上棟式の御祝儀はとても嬉しいものです。上棟式のお祝いはしたほうがよいのです。

 御祝儀は、いくら包むかが問題です。地域によって金額は異なりますが、神奈川県の場

合は、一般住宅の場合で大工さんの棟梁(とうりょう)、鳶(とび)の親方で一〜二万円、それ以外の人はその半額ぐらいでよいでしょう。


「これじゃあ、メンテナンスが大変だな」

▼メンテナンスフリー住宅について

 「家」は建ててからお金がかかります。外部のペンキ工事の塗り直し工事や、材木の腐りが「問題」なのです。家造りを考えるときはまずその「問題」を考えなければなりません。私の家の屋根はステンレスの波板です。そして外壁は屋根材として使うカラーベストを使っております。もう七年経っておりますが、まだ一度ペンキをぬっておりません。まだまだそのような兆候もありません。普通の建て方だったら足場工事代を含めると、すでに二○○万円は下らないでしょう。建築時のステンレスの追加工事代金は一○○万円もしなかったのですから。もう充分「もと」は取っており、お釣りがある状態なのです。

 メンテナンスフリー住宅については私は次のように考えております。外壁にはあまりメンテナンスを考えなくてよい防火サイディングにします。屋根、庇、霧除けなどの鉄部にはステンレス(ステンレス塗装板でも良い。)を使います。もし屋根材がカラーベストであっても役物はステンレスを必ず使いましょう。たったこれだけのことですが、耐久性があり将来的にもメンテナンスなどでお金がかからないのです。


モルタルの仕上げのはね出し
ベランダは耐久性がない

▼木製ベランダとアルミベランダについて

 外部ベランダ・バルコニーは木製、アルミ製が考えられます。輸入品で腐食に強い材質がありますが、腐る心配がないアルミ製が良いと思います。木製でベランダを作った場合は、表面に塗る防腐処理剤(有害な塗料です)を塗らなければ長持ちしません。私はその防腐処理剤が心配なので、アルミ製を勧めます。


プレカットした仕口

▼プレカットについて

 在来工法の住まいを造り上げるのは、高度な技術と経験を持っている大工さんです。ところが最近は設計図面をコンピューターに記憶させると、専用の工作機械が寸分の狂いのない骨組み木材の加工をするのです。このことをプレカットと言います。

 大工さんが加工するより仕口がしっかりしているため上棟している最中でも、大工さんが加工したものと比べると家の揺れがないのです。そしてほとんど仕口に失敗がないのです。

プレカットを導入することによって、工期が大幅に短縮でき、ローコスト化に貢献できるのです。プレカットがなければ今のローコスト住宅の存在はありません。

 しかし、私の住んでいる近くの工務店が、プレカットを使わず伝統を守り手作業で墨付けをし、仕口を造っているのです。後継者を残すための方法で、本当の「手造り住宅」なのです。どちらの方法で造るのが良いのか一概に言えません。ただ私はプレカットを使っております。プレカットも木取りをしますが、その木取りが問題なのです。木目を良く見ないのです。すると後で木が逆に反ってしまい、床が下がってしまうのです。


プレカット工場の加工機械

 ですからプレカットと言えども機械任せにすることは危険であり、まったくの素人だけではだめなのです。木は生きています。やはり人間の経験と知恵が必要なのです。



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