三階建て住宅について1 なぜ三階建て住宅なのでしょう?三階建ては住宅は狭い土地を有効利用して、なんとか多くの部屋がとれるようにするために三階建てにするのです。ですから細い羊羹を立てたようになり、ひょろっとしているのです。 はたしてそれで地震が来ても大丈夫なのでしょうか? 特に最近は、図のような建売りの三階建て住宅のチラシが新聞にはいっています。狭い土地に三階建て住宅を建てるのです。もちろん庭等ありません。ガレージスペース等ある訳がありません。すると建物の中にガレージを入れてしまうのです。 三階建て住宅は基礎工事と筋交い(耐震壁)が命です。一階にガレージを入れてしまうと開口部が多くなり、建物が弱くなってしまうのです。図の様に一階がガレージになっている場合はとても危険です。たぶん確認申請はこの間取りでは許可されていないでしょう。 試しに三階にあがり家を揺すったらどうでしょう。たぶん大きく揺れるでしょう。チラシには、「安心の耐震設計、木造在来三階建て 柱四寸角」とありますが、大丈夫なのでしょうか? 土地も一五・八坪しかありません。返済能力や家族構成のことを考えると、この様な細長い三階建て住宅が、これからもっと増えてきます。 しかしここで大きな問題があります。土地が狭いため、住宅金融公庫の融資が使えないのです。そのため建物などのチェックしてくれる公的機構がなく、耐震性や施工が不安なのです。耐震壁になる部分が少ないと、家が倒れやすいのです。 広い敷地にゆったりした三階建てなら、強度的にもしっかりした物が設計できますが、何といっても土地が狭いのです。狭いところに三階建てを建てることは耐震対策をしっかり考えなければなりません。
2 三階建てのしくみを知らない大工さんが多い三階建て住宅は土地の有効利用という点において、これから伸びると思いますが、施工する大工さんの技術がまだまだ未熟なのが現実なのです。 三階建て住宅には、いままでにない特殊金物を使うのです。特殊金物もたくさんの種類があり、使い方を間違えないようにしなければなりません。骨組みの材木をしっかり固定するのに使うとても大切な金物です。ミスはできません。 特にホールダウン金物には気を付けるところがあります。普通ホールダウン金物を柱に止めるときには、ボルトを使います。しかしコーチボルト(木ねじに似ている大きなボルト)で止めている場合がありますが、材木が割れてしまいボルトの効果がなくなります。そんな施行をしていると大きな地震がきたときにせっかくの金物の効果がないのです。 使用木材も、今までの普通住宅に使っている材木より一回り太い材木を使います。太い材木だからといって安心してはいけません。構造計算で決められた最低寸法の材木と思って下さい。 私も初めて三階建て住宅を建てたときは、構造や仕組みを飲み込むのにずいぶん苦労しました。私を含めて古い頭で仕事をしている大工さん(失礼)にとっては、新しいものは拒絶反応があり、頭の切り替えが大変です。初めのうちは、満足な施工が期待できず消化不良の建物になってしまうのです。 ちょうどタイミング悪く、そのような大工さんに施工してもらった建て主さんは悲劇です。 3 間取りが、丈夫さを(地震に耐えられるか)きめる三階建ての設計のポイントはまず丈夫さなのです。 デザインより、開口部(窓の大きさ)より、まずは耐震壁を十分につけることから設計に入ってください。ですから、狭い土地に三階建てを建てることはとても慎重に取り組まなければなりません。三階より二階を、二階より一階の耐震壁を丈夫にしっかり施行しなければなりません。間違っても一階にガレージ等広い開口部を必要とする設計は絶対にやめるべきです。 浴室も一階にあるように設計しましょう。浴槽に水を張ると備品を含めると四○○〜五○○キログラムの重量にもなります。二階や三階に浴室がある設計をすると、重心が上のほうになってしまい、建物が不安定になるのです。 貯水タンク内蔵タイプの太陽熱温水器を屋根の上に乗せることなど、もってのほかです。何しろ貯湯タンクを含めると最低三○○キログラムもあるのですから。 階段は回り階段より、揺れに強い鉄砲階段(まっすぐな階段のことを言います)にしたほうが丈夫です。 もちろん土台、柱などは腐りやくて強度的に弱い米栂を使うのは絶対にやめなければいけません。柱、土台が知らない間に腐っていたら、地震がきたらひとたまりもありません。使用材料に気を付けましょう。 Copyright (C) 2003 Masuno. All Rights Reserved |