資金繰りをする1 資金計画について資金計画とは、簡単にいうと「建築費や諸費用など必要資金の総額をつかんだ段階で、お金をどのようにして調達するのか事前に計画を立てる」ことです。 具体的には、「どのような方法でいくら」、「誰が」資金を調達し「いつ」支払うのか、ということを計画しておくことです。 建物の建築工事代の支払いは少額の日用品の買い物と違って、契約金額が大きく、いったん着工しますと、途中でお金の用意ができなくなったのでキャンセルというわけにはいかなくなります。資金計画をしっかり立てて準備万端整えておくことが必要です。 以下、資金計画をたてるポイントを簡単に説明しておきます。 (1)「どのような方法でいくら」を決定する
自宅の新築を計画しているAさんの例をみながら説明しましょう。 まず、必要資金の総額を見積ります。住宅メーカーや、工務店の見積書などの工事金額に諸費用を加えたものが必要資金の総額です。諸費用には登記費用やローン保証料等が含まれます。Aさんの例では総額a=1,800万円です。 総額がでたら、この資金をどうして調達するかを検討します。 Aさんは、住宅新築のために何年も前から蓄えていたお金が金融機関に預金として500万円ありますので、これを支払いに当てることにしています。資金計画のなかの自分の手持ち金や預金その他の金融資産は「自己資金」となり、Aさんの場合は、b=500万円です。「自己資金」にはこの他に両親からの贈与金や不動産の売却予定代金(ただし、支払いまでに現金化しておくこと)などが含まれます。 次に「借入金」の計画です。どこからいくら借りるかを検討します。 Aさんは住宅金融公庫から1,000万円、金融機関の住宅ローンで300万円借り、借入総額c=1,300万円です。 このように、資金計画は一般的には「自己資金」と「借入金」から成り立っています。 Aさんの例は、必要総額1,800万円を500万円の自己資金と1,300万円の借入金で支払うという計画になっています。資金計画がまとまったら、金融機関に借入申込みの手続きを行います。希望どおりの資金の承諾を得ることができれば、安心して工事を進めることができます。 (2)「いつ」支払うのか
資金計画にあたって、代金や諸費用の支払時期を考慮に入れる必要があります。 Aさんの支払いスケジュールをみてみましょう。Aさんの場合は工事代金の支払いが三回に分かれています。この工事代金の支払方法は建設工事請負契約時に決められます。 Aさんは、契約金200万円と中間金200万円、建物完成引き渡し時に残金1,300万円を支払うという内容で契約したわけです。 先の資金計画でみたように、Aさんの「自己資金」は500万円です。もしも、契約内容が契約金500万円、中間金500万円、残金700万円となっていたらどうなるでしょうか? 準備した「自己資金」500万円は契約金で全部使ってしまうので、中間金の支払い分から借入が必要になってきます。 このように、代金支払時期と金額は借入の時期と密接に関係していますので、事前に代金については住宅メーカー又は工務店と、借入可能時期については金融機関と十分に打ち合わせをしたうえで、決めることが大切です。 (3)「誰が」資金を調達し、支払うのか
ここではBさんの資金計画を例に、説明しましょう。 Bさんは3,000万円の建築費のうち、Bさんの預金1,000万円とBさんが借り主となる借入金500万円を用意します。後の1,500万円はBさんのお父さんが援助してくれることになっています。 Bさんの支払額 預金1,000万円+借入金500万円=1,500万円 お父さんの支払金額 預金1,500万円 =1,500万円 一般的に、ものを買う場合はお金を出した人が、買ったものの所有者になります。 つまり、「自分の金で買ったのだから自分のもの」ということです。 建物の建築や購入でも考えは同じです。一人の人が全額だして手に入れた不動産はその人一人の名義で登記し(単独所有)、複数の人がお金を出し合った場合は、出したお金の割合で登記する(共有)のが原則です。 Bさんの例では、それぞれ、1,500万円を出し合う形となりますので、新築建物の登記は各二分の一の共有とするわけです。 もしも、この建物を1,500万円しかだしていないBさんの単独所有で登記すると、お父さんの出した1,500万円はBさんに贈与したものとみなされ、後日、贈与税を支払わなければならなくなりますので注意が必要です。 なお、住宅資金については、贈与税の特例がありますが、ここでは説明を省略させていただきます。 登記名義については、住宅金融公庫では共有の場合、借り主が二分の一以上持ち分を持つことが条件になっているなど、借入金によって条件がありますので、事前に金融機関に確認をとっておくとよいでしょう。 2 公的資金(住宅金融公庫、年金)についてまず、すでに一○○平方メートル土地を持っていることが最低の条件です。そして床面積が、八○平方メートル以上ないと融資してくれません。(平成八年一○月より実施。) 普通の人は家を建てるのに、公的資金をよく使います。低金利(平成八年九月一日現在では銀行の変動金利よりも高いですが……)なので皆さんが利用します。民間ローン(銀行ローンなど)と比べて借りるときの審査が厳しく、建物の広さによって貸出金額や金利が異なります。工事中にも現場審査があり、現場の仕事内容をチェックしてくれます。 仕事内容をチェックするといっても、建築指導課の担当者が見に来るのですが、現場に一○分もいません。斜線関係と筋交い関係しか調べないのです。重要部分の基礎工事、骨組みのチェックなどはしません(私が現場審査に立ち合っている限り、それらの部分をチェックしているのを見たことがありません)。ですから公的資金融資住宅でも、手抜き工事をするのは簡単なのです。現場審査があっても安心できません。 住宅金融公庫の融資条件は、建築面積や、建築する人の収入によって融資してくれる金額や金利が異なってきます。 3 民間ローンについて公的資金の融資資金のみでは資金が足りないときや、訳あって公的資金が使えない場合に民間ローン(銀行ローンなど)のみで建築資金を調達するときに使います。民間ローンの金利は自由化になり変動制、固定制があります。返済期間等を良く考えて、有利な条件で借りるようにしましょう。 4 なにも知らない大手銀行の融資担当者と課長大手銀行の融資担当者の勉強不足が原因で、建て主さんの資金計画が狂ってしまった実話があります。その銀行は藤沢市に支店があるF銀行です。被害にあったのは、私が家をたてたSさんです。 SさんはF銀行を通じて、住宅金融公庫と年金の融資の申込をしました。そのときは「住宅金融公庫と二種類の年金」の三つの公的資金を申し込んだのです。融資窓口担当の女性銀行員は、Sさんが書いた申込書のチェックをして受け付けました。 建物の上棟が済み、現場検査も合格しました。数日後、銀行から連絡がありました。「住宅金融公庫と二種類の年金の同時融資はできないのです」と言うのです。「なぜ申し込んだ時にわからなかったんですか?」と尋ねました。 「今年から決まったことで。」といいます。 わたしが年金事業団に問い合わせて事実を確認しました。やはり年金の同時融資は以前からできなかったのです。なぜ銀行は「今年から決まったこと」などとうそをつくのでしょうか? そして、なぜそのような初歩的な事を、銀行は知らなかったのでしょうか? Sさんの資金計画は、銀行のミスで狂ってしまいました。女性銀行員からは「謝り」の一言もありませんでした。 銀行側は、こちらから問い詰めると初めて「ミス」を認めたのでした。 このようなミスはあってはいけないことですが、たまにあるようです。 Sさんは銀行の職務怠慢にあきれています。 5 諸費用について土地と住まいの資金の段取りが終わっても安心できません。それ以外にまだ費用がかかります。印紙代、事務手数料、生命保険料、ローン保証料、火災保険料、抵当権設定のための登録免許税、古屋の解体料、借り住まいのための費用、家具代金などがかかります。 それ以外に建築中に変更工事が考えられます。マンションの場合は毎月、管理費、修繕積立金がかかります。建築費用の一○パーセント程度用意しておいたほうがよいと思います。 6 税金について土地を買っても、家を建てても税金はついてまわります。知ったか振りをして雑誌等を見て一人で計算をして安心していると、後で大変なことになります。資金繰りにも大きく影響します。途中でお金が足りなくなるということも考えられます。 必ず事前に専門家(税務署、銀行など)に相談して確認しておきましょう。 ▼それ以外の費用について外溝工事、照明器具、カーテン代金、地鎮祭、上棟式などの費用を用意しておきます。 Copyright (C) 2003 Masuno. All Rights Reserved |