家を建てる前の必要な知識とは



  1.  木造軸組(在来工法)住宅と大きな問題点

     在来工法とは日本古来の建て方で、伝統の工法を仕込まれた本当の大工さんが建てる住宅です。最近は、プレハブなどにおされぎみですが、根強いファンも多く、一戸建て住宅のの半分以上は在来工法なのです。在来工法の土台、柱などの骨組みのほとんどは木を使い、どのようなプランや設計にも対応可能な工法です。

     工事中の設計変更や増改築工事にも、他の工法と比較しても簡単に対応ができます。

    ▼同じ家でも施工する大工さん達のレベルによってつくりが違う

     同じ家を、別々の大工さんに建ててもらうとします。完成した家を素人が見ても同じように見えますが、建物に詳しい人がよく見ると仕上がりの違いに気がつきます。

     大工さんにもさまざまな人がいます。仕事が早くて、仕上がりが良い大工さんもいれば、遅くて仕上がりの悪い大工さんもいます。程度の悪い職人に当たった建て主さんは、とても悲劇です。職人のみならず、建て主の立場にたって施工していないレベルの低い建設会社や工務店は、もっと「たち」が良くないのです。

     プロが手抜き工事をして建て主をだますのはいとも簡単なのです。プレハブ住宅でも同じことが言えます。決まっている部品を、大工さん(大工さんほどの技術は不要です)が取り付ければいいようになっているだけですが、大工さんのレベルが低ければ施工内容は良くないのです。建物は、どの工法でも良い職人に建ててもらうことがとても重要なのです。

    同じ家でも大工さんによってこんなに違ってくる
  2. 「大手住宅メーカーだったら安心」と思っていませんか?

     大手住宅メーカーに家づくりを頼んでも、地元の指定工務店を使い、施工させる場合がほとんどです。すると坪当り60万円で契約したはずの建物が下請け、孫請けに施工させると、各々で経費を取り合い、実質の建築費は坪当り55万、50万と値打ちが下がってしまうのです。

     建坪40坪の場合は、坪当りで15万円も下請け、孫請け経費として取られると、何と600万円も無駄金を捨てることになるのです。

    ▼悲しい下請け工務店

     下請けをしている指定工務店も、以前は直にお客さんを持っていたのです。それらの工務店は、技術(腕)はあるのですが営業力はないので、大手住宅メーカーの展示場商法に負けてしまい、直の仕事がなくなってしまったのです。

     そのような工務店は、生活をするために仕方なく大手住宅メーカーの指定工務店になり、現場のことをあまり知らない若い現場監督の言いなりになっているのです。せっかく良い腕を持っているのにプラモデルの住宅の部品の組み立て屋になっているのです。悲しいことです。大工さん、もう一度頑張ろうではありませんか。

     そして大手住宅メーカーの現場監督と言っても名前だけで、施工を管理する技術もなく、ただ現場の進行状況によって、次に使う部品の段取りをするだけの能力しかないのです。しかも常時30棟という信じられない数の現場を管理するのです。とても管理できる状況ではありません。そのような体質なのでトラブルが多く、建て主から不満が出できて当然なのです。


    「大手だったら安心」は大間違い
  3.  家づくりは一生に一度だけ

     家づくりはほとんどの人にとって、一生に一度あるか、ないかの大事業です。

     住宅ローンの支払期間は長いですよ。人生で最大のイベントです。大金を投入する事業です。まずこのことを肝に銘じて行動して下さい。              

     住宅展示場を設けている大手住宅メーカーは、展示場を維持していくのに膨大な費用がかかっているのです。豪華なパンフレットもそうです。いったいそれらの費用はどこからでているのでしょう?

     もちろん、住宅メーカーが出しているのですが、その会社で家を建てた建築費用の中に含まれているのです。知らないところでお金を支払わされているのです。その分の住宅ローンの返済額が増えているのです。

     主婦は安いものを求めてスーパーマーケットを走り回っているのに、家と言う高額商品を買い求めるのに、なぜもっと努力しないで簡単に決めてしまうのでしょうか?

    ▼建て主さんはいつも実験台

     私もそうですが、新築する家に必ず新商品を使います。新築する現場で「具合」を試すのです。具合が良かったら次の現場でも採用しますが、そうでなかったらその商品は次からは絶対に使いません。もちろん建て主さんには悟られないようにしますが

  4.  ローコスト化が手抜き工事を招く

     最近は、住宅のローコスト化の波が押し寄せてきています。ところがローコストになればなるほど下職の賃金の締め付けが厳しくなり、手抜きをするようになり、不良住宅がふえてくるのです。結局、最終的に泣かされるのは消費者(建て主)なのです。

     入居後に手抜き工事とわかっても、そのときはすでに遅いのです。毎月返済する住宅ローンを抱えて、裁判する気力とお金がありますか?

     以前、私は欠陥住宅の裁判に何度か立ち合いました。訴えられた建築業者も大変でしょうが、欠陥住宅に住みながら訴訟を起こしている建て主さんはもっと大変です。家庭不和を起こし、神経性の病気になりながらも戦っているのです。裁判をしている家庭は外から見ていてもとても、とても悲惨です。

     そのためにも、裁判だけは絶対に避けるべきです。もし勝ったとしても全額の賠償金がもらえることはまずあり得ません。そのためには、家づくりをする前に業者任せにしないで、最低限度の勉強をするべきなのです。特にローコスト住宅を建てる人は要注意なのです。

     ローコスト住宅が悪いと言っているわけではありませんが、ローコスト化するために手抜き工事に結びつくのが危険なのです。ローコスト住宅メーカーはさまざまな方式で販売しております。そして各社でさらなるローコスト化にしのぎをけずっております。もっと施行の合理化は進みます。

     そして最後には使用する材料と賃金に影響してくるのです。すると大工さんの施工内容が悪くなり、質の悪い住宅が必ず増えます。限度を超えたローコスト化は建物の命取りになります。


    ローコスト住宅はあとがこわい・・・?
  5.  営業マンはノルマがいっぱい

     大手住宅メーカーは、住宅展示場に来る新規のお客しか頼るところがありません。ですから展示場に来た建築予定の人の名簿が欲しいのです。

     住宅展示場に行ってパンフレットを請求しても、住所氏名を書かないと絶対にもらえません。一度住所を教えたら、迷惑になるくらいの訪問攻め、電話攻めに会うのです。

     よくある話ですが、住宅展示場に展示している中古住宅を300万〜500万円位で安く販売する商法があります。これは中古住宅の販売が目的ではなく、家を建てたい人の名簿を手にいれるのが目的なのです。ですから、モデルチェンジ前の中古の展示している住宅は無料でもいいのです。中古展示住宅に抽選で当たった人は利用されているのです。

     よく考えて行動して下さい。中古住宅は安く手にいれても、それ以外にどれだけ費用がかかるか確認するべきです。住宅メーカーは展示住宅を解体してもお金がかかります。それならば、ほしい人に売却してしまったほうが少しでもお金になるし、そんなに遠くない時期に住宅建築を予定している人の名簿が手に入るのです。その名簿に向かって営業マンが突撃するのです。何でもそうであるように、営業マンにはノルマ(数字)があるのです。そのためには営業マンは、以前建築したお客のクレームの電話より、契約しそうな新規のお客のほうを大事にするのです。


    ノルマのためなら何でもする
  6.  クレーム修理はすぐ来ない

     経験していると思いますが、大手・中小住宅メーカーに限らずクレームですぐ駆けつける建築業者はまずありません。私も残念ながら、クレーム処理では、すぐやらなければいけないクレーム以外は、建て主さんに迷惑をかけています。

     あるツーバイフォー住宅メーカーで建てた人のケースですが、新築してすぐに蛇口が壊れて使えなくなりました。修理を頼んだら見には来たのですが、中途半端な修理で一カ月たっても完全に直らないのです。痺れを切らして営業マンに何度か連絡しました。

    「わかりました。サービスに言っておきます」の一言でかたづけられてしまったのです。待てど暮らせど修理に来ないのです。5千円もしない蛇口なのですから、メーカーもクレームで取り替えてしまえばよかったのです。建てたのは大手のツーバイフォー住宅メーカーだったのですが、信頼もなくなり今では後悔しているそうです。東証一部上場の住宅メーカーの話です。対応の仕方一つで信用を失うのです。これも「アフターサービスより新規の客」という住宅メーカーの営業姿勢の現れでしょうか。結局、犠牲になるのは建て主なのです。

     その住宅メーカーの現場監督は一度になんと60軒の現場を管理していたそうです。車には、60冊の設計図書を積んでいるのです。一日二軒の現場を回っても、一ヵ月に一回しか同じ現場に回れないことになります。ですから「しっかり管理してほしい」と祈っていても無駄なのです。

     しかし悲しいことに、建て主さんは二度と顔を見たくなくても、修理はその住宅メーカーに頼まざるを得ないのです。


    「何しろ60軒もあるので、私にも
         どうなっているのか分かりません」
  7.  契約すると立場が逆転する

     建物の場合は、契約するまでは立場的に住宅メーカーより建て主が強く、契約してしまえば立場は逆転してしまいます。契約前は、建て主は「住宅メーカーはお宅だけじゃないのよ」と強気なのです。住宅メーカーの営業マンはノルマがあるため、契約してもらうために必死なのです。ところが契約後は、建て主は「うちだけは特別待遇にしてね」「しっかり造ってね」「お願いよ」と祈るような気持ちなのです。ところが住宅メーカーの社員はそんなことは何とも思っていません。契約さえしてしまえばもう「過去のこと」なのです。

     営業マンにとって契約前の苦労や、建て主さんの今の祈りはどうでもいいのです。ノルマである次の「新規の客」契約のほうが大切なのです。

     建物に特別な条件を付けるのも、打ち合わせ事もすべて契約前が勝負です。

     契約してしまえば、建て主は絶対に「不利」になります。契約書に希望の打ち合わせた「約束条件項目」を記入してもらうべきです。打ち合わせ中は心もウキウキし、とても良い関係で話は進みます。工事が始まってから、施工上または打ち合わせなどのときに発生するトラブルがきっかけで、話がこじれる場合があります。そして、徐々に信頼が薄れてくるのです。そうなったときのために、証拠としてすべての打ち合わせの資料を残しておくのです。工事中に坦当者がかわってしまうこともありますから


    「お客さん、契約してしまえばもう私のペースですよ」
  8.  最終金の支払いは

     工事が終わると竣工検査があります。建て主さんと住宅メーカーの担当者とで打ち合わせどおりに施工しているか、施工に不備な点がないか、双方でチェックするのです。

     不備な点は書面に残し、双方で持っておきます。それをもとに手直し工事をします。手直し工事が確実に終わるまで、最終金の支払いはやめましょう。

     よくある話ですが、景気が良くないため資金繰りに追われ、最終金の支払いを急ぐ業者がありますが、支払ってしまったら後の祭りです。手直し工事にも来ず、建て主が泣き寝入りするケースも少なくありません。

     特に中小工務店、ミニ開発専門の不動産屋に多く見られるケースです。訳あって、どうしてもすぐに最終金を支払わなければならないときは、手直し工事程度の代金を差し引いて支払いましょう。

     大手住宅メーカーなら、「手直し残工事は必ず○○日までに修理します」と言う念書をもらっておけば心配ないと思います。

     いずれにしても、工事中に業者の対応の悪さでトラブルに苦しめられた場合は、最終金の支払いは慎重にしましょう。

     しかし公的資金を利用する場合は、融資金額の入金が住宅メーカーの銀行口座に直接振り込まれる書類を、契約時に作らされる場合があります。その場合は業者とのトラブルがあっても支払は止めることができません。


    最終金を払ってしまえば「後は知らない」ですよ
  9.  工事中に変更したいときは

     現場が動きはじめ工事が進行すると、図面ではわからなかった部分が気になり始めます。

     自分が想像していたものと、実際に進んでいる現場とのイメージが異なる場合があります。「私の思っていたのとイメージが違う」と言うことになるのです。

     それがトラブルのもとになる場合があります。しかし、図面どおりに施工していれば業者のミスはありません。変更追加工事の場合は、追加金額を確認してから変更追加工事をしてもらいます。変更依頼は、気が付いたときはすみやかに伝えます。

     お茶菓子を持って現場によく足を運ぶ建て主さんは、自然に現場監督より大工さんと仲良くなってしまいます。すると大工さんも喜んでくれ、仕事に気合いを入れてくれます。

    「大工さん受けしない建て主さんは絶対に損です」

     そして大工さんと仲良くなると、小さな変更工事を頼んでしまうことがありますが、よくないことです。それが原因で、トラブルになることもあります。変更があったら、まず現場監督に伝えましょう。

     設計士が現場監理している場合は、設計士に直接伝えます。工務店に直接、設計管理を頼んでいる場合は、現場の責任者に伝えます。住宅設備などの変更を依頼する場合は、速やかに伝えます。人を介して変更工事を伝えても、本人に伝わらない場合があります。必ず直接伝えましょう。トラブルにならないためにも。


    建主さんは大工さんに好かれないと損
  10.  トラブルの原因は建て主にも

     トラブルを起こした原因は、建築業者だけの責任だけではなく、必ず建て主にも責任があります。まず第一に、そのような業者に頼んだ建て主自身が悪いのです。

     私も以前、わがままな建て主さんの家を建てたことがあります。とても苦労させられましたが、良い勉強をさせてもらいました。今は良い思い出になっており、感謝すらしております。以来そのようなトラブルを起こしそうな建て主さんの家は、建てないことにしております。

     トラブルを起こす建て主は、本当は自分が悪いのに「自分は間違っていない。業者が悪いのだ」と思っております。このような考えは生まれもっての性格ですから直りません。

     「運悪くタチの悪い業者に当たった」のではなく、「運悪く性格の悪い建て主に当たった業者」と言うことになるのです。そのような建て主には絶対にならないで下さい。

     埼玉県のAさんのケースですが、見積書もなく契約書もなくB工務店に工事を依頼してしまいました。建築確認証が下りたのは何と上棟後なのです。そして工事に手抜きがあったのです。見積書も上棟直前に始めて提出され、頼んだときの金額より1.7倍になっていました。


    「建主一番」と威張っていると
             しっぺ返しがある

     驚いたAさんは今までかかった費用を支払いB工務店をやめ、別のC工務店に完成までの工事を依頼しました。悪いことにC工務店も工事に手抜きがあったのす。Aさんはまだ完全にできあがっていない新居に引っ越して生活していますが、最終金はまだ支払っていません。そして現在トラブルの最中です。Aさんは自分の過失は認めず工務店のミスだけを攻め続けています。Aさんの話を聞いていても支離滅裂で何を言いたいのか理解できないのです。殆ど精神的な病気をわずらっている患者のようにも見受けられました。「家造りに失敗するとこんなになってしまうのかな」と思ってしまいました。そのようにならないためにも、家づくりをする人は努力しなければなりません。 

     まだまだ書くことはたくさんありますが、家づくりをする前の建て主の心構えを、簡単に書かせていただきました。建て主の持たなければならない認識と心構えが、家づくりに成功するためのキーポイントになります。



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